数日前


任を受けた二人は、現場近くに「組織」の協賛企業がないかを探した。そしてとある飲食店に協力を依頼する。
浅倉は客引きに扮して、インカムにつけた小型カメラで対象建物から出てきた人物を撮影、可能ならば店に誘導。
與倉は店のバックヤードで、浅倉からの映像を「S」の構成員サンプルと照合していく。
店に誘導できた者からは、接客のプロがそれとなく情報を引き出していた。
「対象ビルから三人出てきました。接触します」
「了解!大丈夫だとは思うけど、気をつけてね」
「ふふ、ありがとうございます。
──こんばんはー!これからどちらへ?よろしければこのお店などいかがでしょうか?
はい、はい、勿論です。ありがとうございます!
すいません、少々失礼しますね。
もしもし、お客様三名様ご案内いたします。はい、よろしくお願いします。
…お待たせいたしました、ご案内いたしますね。すぐそこですから」
「……これでよし、っと。
さっすが蓮ちゃん特製、顔照合システム!椛くんが送ってくれた映像とこのシステム
で誰がSの構成員か丸わかりだもんねー!
あとは照合結果を本部に送信して……任務完了!」
作戦当日


幸「皆さん真面目に任務をこなしているのに、何を遊んでいるんですか、鉛筆は没収で
す、PADを使ってください」
紺野「あ?おい、取るなよ。あー、ガキの頃からの癖なんだわ。しょうがないだろ、こう
やってた方が落ち着いて集中できるんだよ。」
幸「ほう、ならば俺とのキスより落ち着きますか?それとも、逆に集中出来なくなってし
まいますかね、どっちです、先生?」
紺野「あのなぁ、そりゃあお前のキスの方が落ち着くに決まってるだろ。ん、なんだ、今
からキスしてくれるって言うのか?お前がキスしてくれたら、もっと落ち着いて集中
できるんだがな。」
幸「……ッ!相変わらず、こっぱずかしい方ですね。とにかく、没収したものは返しませ
ん。それと…ご褒美は、また後で、です。それまで待て、ですよ。その方が…俺も、
ゆっくり味わえますから」
紺野「ははっ、まあそりゃそうだな。アイツらが無事に任務を完了して戻ってきたら、心
行くまでキスするから覚悟しろよ。もちろん、それ以上のご褒美も大歓迎だからな。
よし、気合も入ったことだし、いつもよりも頑張ってお仕事してやろうかねえ。」



「あーあー、また来たよ……」
迷路のような路地裏で、俺は携帯を確認していた。
今日の俺の任務はエディと一緒に棗さん・柳裏さんたちのところに雑魚を連れていく事。
時折怒声と共に道を尋ねられれば「あっち行ったよ」と、柳裏さんたちの方向へ誘導しつつ、エディに情報を送る。
「さーて、そろそろフィニッシュかなー……」
時間的にもそろそろエディは例のポイントに到着する頃だろう。そうすればあっちでお二人が始末してくれる。
あとは適当に撤収すれば良いだろうか。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・ッ、たかがクスリ如きに何人群がってきてんだよッ!ちょっとから
かっただけでキレ過ぎなんじゃねえのォ!?」
虚仮威しにと持ってきた銃のグリップを握り締めながら、迷路のような路地裏を逃げ回る・・・どうしてこうなっているかって? 目的の『S』の拠点の麻薬取引で、ブツを横取りして「こいつを横流しして大儲けさせてもらうぜマヌケー!」とか「Sの縄張りなんざ知ったことかよ、バァーカ!」とかいう感じで挑発したからさ。
俺と遥のペアの任務は「拠点に居る大勢の雑魚を誘き出して、棗さんと柳裏さんのペアに叩いてもらう」こと。ちなみに遥は路地裏エリアに隠れて俺をナビしてくれているんだ。携帯のマップには、遥のメッセージと共に狩場へのルートが表示されている・・・攻撃部隊が待っている空き地まで、もう少しでゴールだな!
「ありがとうよ遥、お前のナビでスムーズに走れたぜ・・・・・・さーて、ここを曲がればバト
ンタッチだッ!!! おーいこっちだぜ、ファッキン雑魚共ォ~♪」
中指おっ立てて挑発かませば、『S』の下っ端連中の汚ねえ怒声が後ろから聞こえてくる。だが安心しな、テメェらはもう粋がれねえぞ。この角を曲がれば地獄を見る羽目になるんだからよォ・・・!


得物を手にした背の高い男が二人、路地裏へ急ぐ。
いつもは陽気な短髪もこの時ばかりは口数が少ない。
(今日の仕事場はここか)
目的地、廃ビルで袋小路となっている空間に着いた二人はザッと周りをチェックするように見渡してからビルの影へと潜んだ。
「ちゃんと避けろよ」
「当たるわけがないだろう」
「自信満々だな」
片頬で笑う棗に対し、柳裏は眉ひとつ動かさず言い切る。
「お前の銃が俺を傷付ける事なんて有り得ないと分かっているからな」
(もし掠りでもしたら、それは俺のヘマだ)そんな柳裏の心を知ってか知らずか、棗は何かを確信したかのように目を輝かせる。
「じゃあ遠慮なしに行くぜ!」
ややあって。
デコイに誘き出された下っ端達の怒号を合図に、柳裏と棗は互いの目を見つめ頷き合った。
鈍く光る鉄の塊が動く標的を捉え、柳裏の長い黒髪が夜風に靡き刀身が煌く。
棗が放つマシンガンの先制に次ぎ、柳裏の日本刀が敵を叩き切る。
マガジンチェンジの度、流れるように左右を入れ替え隙間なく攻撃を続ける。
まさに阿吽の呼吸。
時間にして数分のことか、呆気なく制圧され戦闘意欲を失った雑魚共は凸凹のアスファルトに身を横たえていた。
「一件落着」
「だな」
「お疲れ」どちらともなく呟いた二人の顔には静かな微笑みが浮かんでいた。
(美味い酒が飲めそうだ)


「もうそろそろ時間。準備バッチリ?」
「……。」
「…トーゴ。おれ…任務がはじめてこわい。
たぶん、一人じゃないからだ。だれもまもったことがないからだ。
でも始まればおれは刃になる。敵も、敵の攻撃も、全部切ってとおさない刃になる。
…かならずまもってみせる。」
「縹。護ってくれるのは凄く心強いんだけど、それで縹が怪我しちゃうのは駄目だから。
それにボスやツーさんだっている、時として信じて誰かに頼ることも必要。
俺だって此処にきたばかりの時よりかは幾分かマシになったつもりだけど。
それとも、俺じゃ足手まといだから信用できない?」
「む…。けがしない。足手まといもない。…、わかってる。」
「そう。なら頼りにしてる。
…はい、不安が和らぐおまじない。」
「? ん、ぅ…。
……、…あめ。あまい。」
「…――もうへいき、だ。行こう。」
「ん。きっと俺らなら上手くいくから。」
「…ありがとう。」



冥「しんがりだろ?俺は油断なんざしねぇし、スキも見せる気はねぇ。アンタには護衛
の2人もいるが俺がいる限り後ろから狙われることはない。だから怪我してるヤツら
を治してやってくれ。」
琥珀「嗚呼、冥と立花君と紅君の3人が居るから、
俺は安心して治療に専念できる。
いいか?3人いるから、安心して治療できるんだ。
頼むから俺で治してやれる以上の怪我はするんじゃないぞ?
特に冥。相棒として俺の背を預けれるのは、お前だけなんだからな。
無茶はしてくれるな……って言ってる傍から」
冥「(要は俺に敵を引きつけて倒せばいいんだろ。簡単な計算だ)
フン、最後っつーことは雑魚しか残ってねーんだろ?
正々堂々正面から攻撃できねぇヤツらなんざ蹴散らしてやるよ。
ほら、撃ってこい。よーく狙えよ。」
琥珀「……アレでも無茶じゃない、と信じるのも相棒の仕事の内、か。
やれやれ、大事な相棒が怪我する前に負傷者の手当して、動けるようにしてやら
ないとな」


紅
「久我、あまり独りで行動するな…、
聞く耳を持たない、か。
立花、悪いが久我の眼になってもらえないか?
あいつの背後を狙う輩を仕留めて欲しい。
だが、くれぐれも無理はするな。
無事に帰還すること、それが何よりもボスの望むところだ。」
静香
「はい、必ず。
冥さんも金堂さんも、お守りしてみせます。
どうか紅様もお気をつけて。
…家族の皆で、一緒に“家”に帰りましょう。(ふ、とほほえみ」
紅
「ああ、私には立花がいてくれるだろう?(微笑み返し)
背中を預けられるパートナーがいる…とても心強い。
安心して、全力で任務に当たれる…、改めて、ありがとう。」
静香
「(目を丸くした後、嬉しそうに頷き)はい、お傍に居ります。
私も…こうして誰かに“頼る”事が出来る事…心強く思います。
ありがとうございます。
必ずこの任務、成功させましょう。」





蒼
「予想通り、ハードルが低すぎたみたいだな。」
碧
「ほらみろ、俺たちの言う通りじゃないか。
帰ったら、紅のヤツの奢りでみんなで飯でも食いに行くか。」
蒼
「ふふっ、気分がいいから、俺がみんなに何かご馳走するよ。
料理を作りたい気分なんだ。」
碧
「おー、それもいいなあ。
(ふと目の前で震えるターゲットたちを見遣り)
…って、アンタたち、念仏は唱え終わったのか?」
蒼
「…さよなら。」
